2016年12月13日火曜日

ニャオニクス姉弟《中》 カプ・テテフの能力

ボクと姉さんは、お互いの「毛の感触」がたまらなく好き
寒い時はよく二人で体をこすり合わせて、ぽかぽか暖まったものさ。

その晩……ボクと姉さんの体はもっふもふ
ボクたちネコだから、
いつもフサフサの毛に包まれているんだけどさ。

その夜はいつにも増して、ボクたちの毛並みはなめらかだった。


あの後、ウルガモスさんとホテルについていったボクと姉さんは
2日ぶりにシャワーを浴びさせてもらった。

風呂上がりにボクと姉さんは「ドライヤー」にかけられると
毛がこんな風に、
ふんわりもっふもふになったという経緯さ。

ふんわふわのボクはいつもの服を着て、帽子をかぶり、
姉さんと一緒にウルガモスさんをたずねた。

ウルガモスさんはソファーに腰かけながら、優雅に紅茶を嗜んでいた。


「やあ、リフレッシュしたかね?」

ボクと姉さんは一緒に「はい」と返事した

久しぶりにゆっくりシャワーが浴びられて満足したし、
好意的なウルガモスさんの待遇に
ボクと姉さんは、感謝の気持ちでいっぱいだよ。

「メラルバ、そこにいたのか
客人に挨拶しなさい。」

ウルガモスさんは、ボクたちの後ろに向かって言った

振り返るとそこに幼い子供がいた
白い毛がふわふわしてる、幼虫の男の子がさ。

まだ6、7歳ぐらいだろうか?
ボクがじっくり見てるとその子はあたふたして、ソファーの後ろに隠れちゃった。

その子は顔をちょこっと出すと、
小さな声で「こ…こんばんは」と言ったような気がした

「キハハ、ワタクシの子メラルバだよ
とっても良い子なんだが……人見知りが激しくてね。」

ウルガモスさんが「おいで」と言うと
その子……メラルバ君はソファーにのぼり、彼の膝にちょこんと乗った。

片手にティーカップを持ちながらウルガモスさんは
もう片方の手で、メラルバ君をなでている

ボクはちょっぴり微笑ましくなった。

立ったままのボクと姉さんに、
ウルガモスさんは「かけなさい」とすすめてくれた。

けどさ……このソファー
ボクと姉さんには大きくて、足が床に届かないよ

しょうがないのでボクたちは
ソファーを汚さないように気をつけながら、
奥の方へと腰かけ、両足のさきをウルガモスさんに向けるようにして座った

向こうから見るときっと二体のぬいぐるみが
仲良くソファーの上にぽん、と並べられている風に見えたかもしれない。

ボクたちはさっそく「一番知りたいコト」をたずねた

「ウルガモスさんは……カプ・テテフというポケモンと
知り合いだと聞いています。」

ウルガモスさんは、紅茶を飲もうとしたのをぱっと止めた

持っていたティーカップを机に置くと
ボクたちの顔をじっくり見て「それをどこで?」と聞き返してきた

ボクと姉さんは顔を見合わせた後、
自分たちの身の上や、旅の理由について話した。


「なるほど。君たちは、魔法使いの一族か」

ウルガモスさんは納得した様につぶやいた

といってもさ……
ボクと姉さんはまだ半人前なんだけどね。

「カプ・テテフは」

彼が語りだすのを、ボクと姉さんは真剣に聞いた

「ワタクシの古くからの友人さ。変わったポケモンでね
彼女には不思議な力があるのだよ。」

不思議な力?
それに「彼女」って事は……カプ・テテフは女性?

「いかにも。彼女にはポケモンを癒す能力があるらしくてね
彼女の「りんぷん」に触れた者は、どんな病や傷も立ちどころに治ると聞く。」

「それに……」とウルガモスさんは続けた

「カプ・テテフに近づいたエスパーポケモンは「サイコパワー」が強化され、
能力が何倍にも上がるという話もある。」

ボクと姉さんはびっくりして、お互いの顔を見合わせた

エスパーポケモンの能力を何倍にも上げてくれる!?まさか……
そんな事が本当にできるっていうの?

「彼女ならできる。そういう力の持ち主なのさ」

ウルガモスさんはトプトプと、カップに紅茶を注いだ。

「だが……それを知った大昔のポケモンたちは、彼女をしつこく狙い続けた。
そのせいで今やカプ・テテフはすっかり「ポケモン不信」になり……
誰も知らないどこぞの秘境に、隠れ暮らすようになったのだ。」

今となっては彼女の居場所を知るのは「一部の友人」だけだと
ウルガモスさんはそう語った。

だからカプ・テテフは、みんなから「幻の存在」と言われるようになっていったんだ

「けどさ……ウルガモスさんは知ってる。
そうなんでしょ?」

ボクが問いかけると、彼はキハハッと笑った

「もちろん知っているさ。
ワタクシと彼女は200年も前から友人だからね。」

に、二百年!?
ボクと姉さんは思わずたじろいだ
ウルガモスさんは……そんな昔から生きているの?

どうやれば、それだけ長生きできるのさ!?

そんなに生きられるのはせいぜい
「伝説のポケモン」ぐらいだとマシェード叔母さんも言ってたのにさ!

「おっと、これはつい口を滑らせてしまったね。
今のは極秘事項だ。忘れてくれたまえ……キッハハハ」

えェーー!?
わ、忘れろって……言われてもさ!

「さて。恐らく君たちは、カプ・テテフの居場所について知りたいと思っているだろう?
だがね……それはできない相談だよ。」

ボクは困惑した

「なぜなのさ!?どうして?」

思わず声を荒げたボクに、ウルガモスさんは冷静に答えた。

「彼女、カプ・テテフはね。他者と関わるのに疲れきっている
その能力ゆえに……
さんざん狙われてきたのだから仕方のない事だ。」

「今の君たちみたいにね」とも付け足した

「どうか理解してくれたまえ……
静かに暮らしている彼女を、どうかそっとしておいて欲しい
彼女の平穏が乱されるような事はワタクシも、友人として決して望まないのだ。」

そんな……
ボクと姉さんは、何もその力が目当てじゃないのに

ただカプ・テテフに会えば、
ボクたちの「両親」について何か分かるかもしれないから
そう思っているから探しているだけなのにさ……

「お願いです、ウルガモスさん!
ボクたち悪さしません!
だから教えて下さい……カプ・テテフのいる場所を!」

ボクと姉さんは必死に頼んだけど
ウルガモスさんは、首を縦に振ってはくれない

ボクと姉さんは、しょげた顔してお互いを見合った。

やっとカプ・テテフについての手がかりを見つけたのに
居場所を教えてくれないなんて……

ボクは悔しい思いで、涙が出そうになり
こぶしをぎゅっと握りしめた

「ねえ」

しばらく沈黙が流れた後、ふと小さな声がした

ボクは顔を上げ、声の主をたどった
メラルバ君だった

「パパ、このお兄ちゃんとお姉ちゃんに教えてあげてよ
テテフちゃんのいる場所のこと。」

テ……テテフちゃん??
ボクと姉さんは何のことか分からず、困惑した

「この二人はきっと、パパとママに会いたいだけだよ……
ボク……その気持ち分かるからさ。」

「お願いだよパパ」とメラルバ君は父親を見上げながら、
小さな身体で一生懸命
ボクたちのために訴えてくれた……

するとウルガモスさんはククッと笑った

「やあ、許してくれたまえ。君たちのリアクションがどうしても見たくてね
ついつい「意地悪」をしたのさ。本当にすまない」

ボクは意味が分からなくて、きょとんとした

「もちろん教えるさ。カプ・テテフの居場所……
彼女ならアーカラカラ山にいるよ。」

アーカラカラ山!?
ボクと姉さんはソファーから飛び上がった

「西の島々にある火山さ。
カプ・テテフは今そこに独りで住んでいる。彼女に会いたければ訪ねるといい」

ど、どうして急に?
ボクは嬉しいのと同時に、わけが分からなくなった

「だから言っただろう。「意地悪」をしたと
ワタクシはね、最初からカプ・テテフの居場所について
教えるつもりだったのさ。」

最初から……!?
え?じゃあボクたち……からかわれていたの?

「もっとも、この子には見抜かれていた様だけどね。」

ウルガモスさんは笑って、メラルバ君をなでた
メラルバ君もニコニコしている

そんな……ボクたち真剣なのにひどいよぉ~!

「君たちの切実な思いは十分に伝わった
きっとカプ・テテフも……君たちになら会ってくれると思う」

ウルガモスさんは優しく微笑んだ

「ワタクシは、子供が大好きでね。
頑張っているところを見ると、
ついつい応援したくなってしまうのだよ。みんなのヒーローになりたいのさ」

ボクと姉さんは最初あっけにとられていたけど、
だんだんと喜びがわき上がって、満面の笑顔でお互いを見合った

そして、ウルガモスさんとメラルバ君にお礼を言った

ついに分かったカプ・テテフの居場所……
ボクと姉さんの旅の「終着点」がその時、はっきりと見えたような気がした


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