2018年5月31日木曜日

霧の幽霊船《1-Eins》 ライボルトさんの地図

「小僧共、カプ・レヒレの話が聞きたいってか!」

気さくで大らかなライボルトさんは、愉快そうにガハハと笑い
やってきた僕たちを快く家に入れてくれた

ラクライのパパ・ライボルトさんは《古代遺跡》の調査を専門としている探検家で、
今まで数えきれないほどの遺物や文献を掘り出してきたらしい。

しかも、そのどれもが
考古学的に非常に価値の高いものばかりなんだってさ。すごいよね。

「こっちだ!」

ライボルトさんは上機嫌そうに、
僕とクマシュンとラクライを奥の部屋へ案内した

骨董品が並ぶ家の中を、僕たちはそーっと気をつけながら歩いた

「ねーねー。これさー
ぜんぶラクライのパパが見つけたの?」

クマシュンが途中、
背伸びしながら棚の上にある花瓶をツンツンつつき出した

「そうらしいよ。つか、あんま触るなって!壊したら俺が怒られるから」

ラクライがクマシュンを諫めたけど
ライボルトさんが「気にすんな、そいつは安物だからよ」と笑った



「よっこらっと!」

こじんまりした埃っぽい部屋で、
ライボルトさんは奥のタンスから一本の「巻物」のようなものを取り出した



「ミスト・アイランド……」



それは島の名前が書かれた一枚の《地図》だった

「50年前、俺がまだチンピラ同然のトレジャーハンターだった頃によ、
航海で遭難して偶然この島に流れついたんだ。」

ミスト・アイランド……
昔、まだ若かったライボルトさんは
霧の立ち込めるこの島でカプ・レヒレに助けられたんだって。

"漂流者"として島に辿りついたライボルトさんは
何者かの声に呼ばれるように、島の深部を目指して歩いたらしい……

草原を越え、風の吹く峠を登り、
火の川が流れる洞窟を抜けたライボルトさんは、そのさきで"霧に覆われた船"を見たという

「それが伝説の守り神、《霧のレヒレ》の棲み処だったんだ。」

ライボルトさんはそこで守り神カプ・レヒレに色々とお世話になった末、
無事に島を出られたんだってさ

それからというもの……
ライボルトさんはたまに幾度か、《霧のレヒレ》のいるミスト・アイランドを訪ねて、
食べ物や道具なんかをたくさん届けてるらしいって。

彼女への恩を忘れないように、
そして、そのときの冒険をいつまでも忘れないために……だってさ

ドラマチックな話で、僕ちょっと感動しちゃった。

で、そうして何度も島を行き来している内に、
ライボルトさんはいつの間にかミスト・アイランドの地図を書いたんだってさ

それがこの地図……
世界で"たった一枚しか"存在しない
貴重な「カプ・レヒレの居場所を記した地図」というわけだね。

或いはこの地図こそ、ライボルトさんが今までの生涯で手に入れてきた中で
"一番スゴいお宝"なのかもしれないね。

たぶん、本人もそう思っている……
カプ・レヒレの話をする時、目をバチバチと輝かせるライボルトさんを見て僕はそう感じた

「そんで、レヒレはどんなやつだったの?」

ラクライがぶっきらぼうに聞いた

「そうだなァ……底が見えず、つかみ所が無いっていうか
まさに《霧》のような奴だったよ。」

ライボルトさんは手を組みながらウーンと唸った
さすが《守り神》と呼ばれるだけあって、一筋縄ではいかない感じみたいだね。


でも……
僕がホントに気になるのは、

実はもう一人の《守り神》の方だったりする。


「ライボルトさんはひょっとして、他の《守り神》とも知り合いだったりしませんか?
たとえばカプ・テテフとか。」

僕は期待をこめて聞いてみた

しかし、ライボルトさんは「とんでもねぇ!」と慌てたように首を横に振った
自分が知り合いなのは、あくまで《霧のレヒレ》のみだってさ

高名な探検家だからもしや……と思ったけど、そんな都合の良い事は無いか。がっくし

「言っておくが、これを見たからって会いに行こうなんて考えるんじゃないぞ
ミスト・アイランドは過酷なダンジョンなんだ!」

「お前らみたいなチビっ子じゃ《霧のレヒレ》に辿りつく前におっちぬのがオチだぜ」と
ライボルトさんは笑いながら言った

決して、僕たちを馬鹿にしたつもりは無いんだろうけど、
その言葉を聞いてラクライが「カチン!」ときたのが僕にはすぐ分かった
クマシュンはよく分からない。

僕は"子供扱い"されても平気だけどね。

実際、僕とラクライはたったの8歳だし、クマシュンに至ってはまだ3歳だもの。
子供だけで危険なダンジョンなんか突破できるはずないものね。


ともあれ……

ライボルトさんから聞けたカプ・レヒレのお話……
それは僕の果てしない"知的好奇心"をまた一つ満たしてくれたのでした。

僕は満足し、ライボルトさんにお礼を言って
この時は素直に帰っていった



この時は……ね。




《2-Zwei》
《0-Null》



0 件のコメント:

コメントを投稿