2018年6月13日水曜日

Chapter8:復活のVボード

すさまじい猛暑の中、《商店街》を一人でうろついていると
空からバッサバサ羽ばたく音がきこえた

「おうチビ!」

郵便屋ペリッパーさん所の「チビすけ」が俺の声に気づき、降りてきた。

背中に何か背負っている……布でくるんだ"板きれ"みてぇだな
よっぽど重てぇのか、着地した途端にチビは「わぁっとっと!!」と倒れそうになった

「大丈夫か?その怪しげな荷物は何だ」

俺がよしよし撫でてやると、チビは嬉しそうに鳴いた

「あのさ、ちょうどピチューお兄ちゃんの家にさ
届けにいくところだったんだ。」

チビは翼の先っちょで背中の"板きれ"を器用につかむと
「ハイっ!」と俺によこした

何だ?やけに重いぜ……
俺はゆっくり、おそるおそる布をはずして中身を確かめた。

「俺の《Vボード》じゃねぇか!」

出てきたのは新品のごとくピカピカ光るVボードだった

昔、ピィに乱暴運転されて無残にぶっ壊された俺のVボード
それが今、完ペキに修理され帰ってきた……

「ドテッコツおじさんが直してくれたんだって。
ボク、これを届けにピチューお兄ちゃんの家へいくところだったんだよ」

うひょ~!最高に嬉しいぜ!!
また"こいつ"で空をかっ飛べるとは思わなかった

サンキューチビすけ!
大工のおっちゃんにも後でお礼を言わなくちゃいけないな!

俺は力いっぱい、長年会ってない恋人のようにVボードをスリスリこすり降ろした



「ところでさ何買いに来たの?
あ!もしかして、カプじいにあげるプレゼントとか?」

チビのくせになかなか鋭いな

その通りだ……
プレゼントを買いに来たはいいが、候補の品が運悪くどれもこれも売り切ればっかで
途方に暮れていた時、お前が飛んでくるのが見えたんだ

そういうお前こそ、カプじいに何を贈るつもりだ?

「ボクはねえ、
こづかいで買った『うちわ』をおくるつもり!
最近メチャクチャ暑いし、カプじいも喜んでくれるはずだよね!」

「ボクの"あしがた"つきだしさ!」と言い、チビはクツの裏を見せた

うちわか……なるほど!そいつは思いつかなかった
風呂好きの素朴なカプじいの事だから、意外とそういうもんを喜ぶかもしれんな

「よーし!決めたぞ
だったら俺は、そこの店に売ってるタオルを贈るぜ!」

俺の決心を聞いたチビすけは「えェ!?そんなのしょぼいよ~」と
ひでぇリアクションをしてきた

く、お前のうちわとどこが違うってんだ!



「あべべべ~!お待たせ」
「ピチュー、プレゼントは決まった?」

チビとだべってる内にピィとププリンがきた

「あら、キャモメ君じゃない!
アンタもくそじじいへのプレゼント買いに来たの?」

ピィはしゃがんでチビに優しく話しかけた
恩人を「くそじじい」呼ばわりされた事に俺は反発したが、ピィにあっさりシカトされた

「ちがうよ。ピチューお兄ちゃんにお届け物!
プレゼントならもう用意したよ。ボクのあしがたつきの『うちわ』をさ!」

「ピチューお兄ちゃんはタオルをおくるってさ!」とチビは一言付け加えた

「うちわにタオルって……
アンタら、もうちょっとマシなもん考え付かないの?」

何を~!?
そういうお前らは何を選んだんだよ

二人はシレッと答えた

「あべべべ~。
僕はママの畑で採れた木の実100コあげる予定だよ~」

一体何しに《商店街》へきたんだお前は。

「私はそこの店で奪ってきた"ウルトラレスラー・ガオガエン"の
プレミアムポスターをあげる予定よ!」

奪ってきただと……
てか、カプじいはそんなもんに興味ないだろ

二人揃ってふざけてやがる
これじゃあ、チビすけの方がよっぽど気が利いてるぜ

「うわっ!やばい!
パパの手伝いあるからもういかなくちゃ!」

チビがふと思い出したように慌てた

まだ幼くても、やがてペリッパーさんみたいな郵便屋になるそうだしな
そのための修行は大事だよな

「わかったぜ!今夜、《カプじいの家》で会おうな!」
「うん!」

俺たちはパーティでの再会を約束し、飛んでいくチビにバイバイした



さてと……
買い物も終わったし、カプじいの誕生パーティまでだいぶ時間があるぜ
どこで何して過ごそっかな

「あべべべべ~。
僕、一度家に帰って"引っ越しの事"をパパとママに相談してくるよ~」

ププリンが柔らかい体をプクプク揺らして言った

ププリン……
本当にすまねぇな、俺のせいでよ……

「私ん家、みんなシゴト行ってて誰もいないし。
ヒマだからピチュー、アンタの《Vボード》貸しなさいよ。ドライブしたいから」

ドドッ、ドライブだと!?冗談じゃねぇぞ……

俺はすたこらと逃げ出し、「オラッ!待てやピチュー!!」と喚くピィを振り切り、
Vボードに跨ってその場からトンズラした



「ふう、危なかったぜ……」

俺の愛しいVボードが帰ってきたってのに
またピィの乱暴運転で破壊されちゃたまったもんじゃないぜ

ピィの脅威から免れ、お空の上で俺はホッと胸を撫でた

しかし、これからどうする……
ピィとププリンの二人が不在となりゃ、チビすけでも誘って時間を潰すか?
いや!チビはペリッパーさんの手伝いがあるんだったな……

くっそ~!
誰かいないのか?都合よくヒマそうなやつはよ~

「ギャーー!!助けてぇ~」

どう時間を潰すか悩んでると"強烈に聞き覚えのある声"がした

「まさか……」と悪い予感がして下を見ると
サニーゴがまたしてもサングラスのゼニガメどもに追いかけられていた

く、またかよー!!

前と似たような展開にゲンナリしながらも、
見捨てる訳にもいかず、仕方なく俺はサニーゴに向かって急降下した

そしてスタイリッシュにサニーゴを拾い、電光石火のごとくその場から飛び去った



「おい、大丈夫かよ。」

サニーゴは四つ這いになり、汗だくでゼェゼェ息を切らしていた
そんなにたくさん走ったのか?

「それもあるけど……僕は『高所恐怖症』なんだよ!
助けてくれたのは感謝するけどさ……もう二度としないでね!
いきなり《Vボード》なんていう恐ろしいモノに乗っけるなんてさ!」

う、そいつは悪いコトしたな……

しかし……
カワイイぜ……

いつも強気で自信たっぷりって感じなのに、
今はすっかり怯え、まるでイジメられっ子のごとく不安そうになってやがる

やべえ、コイツべらぼうに可愛いぜ……

これで女なら……
女ならどんだけ良かったかーー!!

「何さ?頭なんか抱えて。
ていうか、きみこそ体の方は大丈夫なわけ?」

サニーゴがやぶから棒に言った
俺の体だと?何の話だ

「だってさ、昨日の夜に……」

サニーゴは何かを言いかけたが、途中で言葉を切った

「きみさ……
あの夜に何があったか、ひょっとして覚えてない?」

何だその意味ありげな台詞は

お前とグミ食ってダベった事しか覚えてねぇよ
それ以外何があったってんだ?逆にこっちが聞きたいぐらいだぜ

「そう……
だったらいいけどさ。」

サニーゴは小さくため息をついた

「ぐふ、それより!!
お前こそ昨晩言った事を覚えてるだろうな?
俺たちを《デイズマリン》に移住させるって話をよ」

もうピィとププリンにも言っちまったし、
これでもし「冗談でした」だったらマジで許さんからな

サニーゴはエッヘンと偉そうなポーズをとった

「大丈夫さぁ~
何たって僕は市長だよ!約束は守るさ」

「ただし"条件"があるけどね!」とやつは不吉な一言を付け足した

俺は嫌な汗が出るのを感じた

おい!待て待て!!
今頃になって"条件"とか!そりゃないだろ

「な~に!簡単さぁ~!
きみの知ってるこの街のイチオシスポットを教えてくれればいいのさ!」

イチオシスポットだと?

「そうだよ!僕、もうこの街ほとんど回っちゃってさ
退屈してたんだよね。だからさ、もし僕がまだ行ってないような楽しい場所を知ってたらさ、
ぜひ教えてよ!きみみたいな悪ガキだったら色々と詳しいでしょ?」

悪ガキとは言ってくれるぜ……

まぁ、そういう事なら「あそこ」しかないな
歩いて行くにはちと遠いが……"とっておきの場所"に案内してやるぜ。


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