2018年8月7日火曜日

Chapter10:敗北者ピチュー

言いしれぬ胸騒ぎを感じ、ポケットタウンへかっ飛んできた俺は
その"陽気な光景"に唖然とした

「お祭り……なのか?」

街は明るい歌と楽しげな声に満ちていた

花火が次々に空へと打ち上げられ、
ポケモンたちはみんな、珍妙な格好してワイワイ踊っていた






やたらと焦げ臭いぞ……

あの大量の"花火"のせいか?
街が燃えてると思ったのはアレのせいだった様だな……

「ピチューーー!」

安心してると、向こうからハッピを着たピィとププリンがやってきた

「遅いよピチュー!」
「あべべべべ!もう祭りが始まってるよ~!」

ピィププ!何だよその祭りって?
それにその格好は……

俺が聞くと二人は驚いたように互いの顔を見た

「ハァ?何言ってるのよ!?
カプじいの誕生日にはいつも盛大にやってる事じゃない」
「あべべべ~!ピチューとうとうボケた~?」

そうだったっけ……?
てかププリン、お前にだけは「ボケた」だの言われたくないぜ

「ピチューお兄ちゃーん!」

今度は上から声がし、見上げると
やたらデカいチビすけがバッサバサ飛んできた

「チビ!どうしたんだその体は!」

昼間会った時より十倍でかくなってるじゃねーか
まるで別人だぜ!

「あのさ!ボク、昼寝して起きたら
でかくなってたんだよ!パパがいうには「せいちょーき」なんだってさ!」

んなばかな!
どうすりゃこんな短い間にそんだけデカくなれるんだ
成長期にも程があるぜ!

これじゃチビすけじゃなくてデカすけだな!
ぐふははははは!!

「もうすぐ誕生パーティが始まるってさ!
ボクに乗って!お兄ちゃんたちを《カプじいの家》につれてってあげる!」

チビはそういうとしゃがんで、俺たちに乗るよう勧めた

俺たちはデカくなったチビによじ登った
まさかチビすけに乗れる日がくるとは夢にも思わなかったぜ

「じゃ行くよ!
落ちないようにちゃんとつかまってるんだよ!」

チビは俺たちを乗せてバッサバサと飛び立った

ぐふぁ~……
風が最高に気持ちいい……
それにチビの羽毛がやたらとフンワリしてるぜ

チビは普段からふわっふわだが、
今はサイズのせいか、いつもよりもっとフンワリしてて極上の触り心地だぜ。

なんだかウトウトしてくる……


このまま寝落ち
しちまい

そうだ



……













気がついた時、俺は芝生に倒れていた
目を開けるとポケットタウンが"業火"に包まれ、燃え盛っていた。

「"夢"だったのか……」

そうだ……
Vボードで飛んできたはいいが
盛大に着地をしくじって、ずっとここで失神していたんだ……

俺はフラフラ立ち上がると街の方へ歩いた

すさまじい熱気と焦げ臭さで息が詰りそうな中、
街の住民が逃げまどい、水ポケモンたちが火消しに奔走していた

まるで地獄だぜ……
一体ここで何が起きたんだ……

ピィとププリンは?チビすけは?
カプじいやリザードンさんはどうなった!?みんな無事なのか!?

「ピチュー君!」

誰かに呼ばれた気がし、俺は振り返った
市役所のハピナスさんだった

俺はここで何が起きたのかを訪ねた

「ここは危ないわ!
仮面をかぶった謎の軍団がきて、街で暴れているの!」

か、仮面の軍団だと!?

ハピナスさんはソワソワした様子で、
額の汗を拭きながら、あちこちをキョロキョロと見回した

「今、グランブル署長たちがその軍団と戦っているの
ピチュー君もすぐに避難しなさい!」

ハピナスさんは「私は逃げ遅れたポケモンを助けに行くから!」と言い残し
タタッと炎の向こうへと走り去っていった

「なんて勇敢なんだ……」

そそっかしくて可愛いだけの姉ちゃんだと思ってたが
こんな状況で他のポケモンたちを気にかけられる《優しい心》の持ち主だったんだな

ハピナスさんのその姿が俺には一瞬、カプじいに重なって見えた



そのとき突然、俺は「昨晩の光景」を思い出した

仮面をつけたポケモン軍団……
そいつらが十体以上、カプじいの家でたむろしている光景を……

「くそっ……あれは夢じゃなかったのか!
カプじいが危ねぇ!!」

俺は例えようもない焦燥感に駆られ、大急ぎで《カプじいの家》へと向かった

やっとの思いで到着した時、
家は業火に包まれ、仮面をかぶった集団に取り囲まれていた

カプじいの姿はどこにもなかった

「なんてこった……」

昨晩見た「仮面のやつら」が、
ポケットタウンをメチャクチャにしやがった犯人だったのか

よく見ると、その周りにポケモンが何体か倒れていた

グランブルやその手下たち……
それにカプじいの誕生パーティに参加しようとしていたのか
ドレスとかスーツの格好した連中……さらに"見覚えのある二人"を見つけた

「ピィ!ププリン!!」

二人は白目を剥いてぐったりと失神していた
何でお前らまで……




おのれ……

よくもピィとププリンを!!
街をこんな風にしやがった上に、俺のダチにまで手を上げるとはマジで許せねぇ!
怒りに燃え、俺は「仮面のやつら」に向かって叫んだ

やつらは俺の存在に気づいて、
ギロリとこっちを睨み、グルル……と低い声で唸った

その眼光は明らかな"敵意"に満ちていた

「上等だぜ……!
このでくの坊どもめ!
街をメチャクチャにしやがった報いを受けさせてやる!!」

そのとき、俺の気持ちに応えるかのようにシッポがピカッと輝きだした
岩をぶっ壊した時と同じだった

イケる……!
今ならイケるぜ!!
食らいやがれ!俺様の《アイアンテール》をよ!!

「かはーーっ!!」という掛け声と共に
俺は渾身の勢いで飛び上がり、軍団の中の一体の脳天にシッポを叩きつけた!

ノックアウトしたと思った……




が……
そいつはワザが直撃しても平然とし、逆に俺がシッポを噛みつかれた

「あででで!!
畜生!放しやがれ!このでくの坊め!!」

俺は逃れようと必死にもがいたが、一向に放してくれない

もがいてる内に、
シッポに巻いていたタオルがヒラヒラと舞った

「く、カプじいへのプレゼントが……!」

俺は必死にタオルを掴もうとしたが、するりと手をすり抜けて地面に落ちた

それを見た仮面のやつは
あろうことか、それをクシャクシャに踏んづけやがった

「やめろォー!」

俺の叫び声も空しく、やつが足を離した後
出てきたタオルはボロボロに破れ、目も当てられない状態になっていた。

その直後、俺はシッポを噛まれたまま乱暴にブン回され、地面に派手に叩きつけられた





つ、強ぇ……!!
岩をも打ち砕いた俺の《アイアンテール》が通用しないだと!?

「レベル」が桁違いすぎる……!!

地に這いつくばり、激痛に悶えながら
おそるおそる顔を上げると「やつら」がゆっくり、俺を囲むように迫ってきていた

こ、殺される……!!
圧倒的な"力の差"を前にし、
俺の自信は砕かれ、凍り付くような恐怖に身が震えまくった

逃げ出したくても腰が抜けて動けなかった

やがて、やつらは俺の周りを取り囲み終えると、
いっせいに口から「エネルギーの球体」みたいなもんを作り始めた

おい、待てよ……
その明らかにヤバそうな球体で何しようってんだ!?

俺はとんでもなく悪い予感がし、その場からトンズラしようと足掻いたが、
やつらはすぐに「それ」を俺めがけて炸裂させた

「ぶげはーーーーっ!!」

爆音とともに、俺は空高くぶっ飛ばされた






ちくしょう……
何だってんだよこの化物どもは……

いきなり現れてポケットタウンとみんなをボロボロにしやがって……

こんなド悪党共に一矢も報えないまま、
俺は敗退するのかよ……

無念だぜ!!

悔しさで叫びながら、俺の意識は空の彼方へと吸い込まれ、
やがて目の前が"真っ暗"になった……


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PS:
・・・ピチューが中心の話だとモチベーションが上がらない今日この頃
いや、昔からですが。

熱心なピチューファンの方がいらっしゃるようですが、
あえて厳しい事を言えば、
あくまでピチューは「視点」の一つであって、今やもう星の塔の主人公ではありません。

『New!ポケットアイランド物語』はピチューが主人公の物語ではなく
彼を視点として、ポケモン世界に住まうポケモンたちを描いていくための物語です。

ピチューの"周りのポケモン"たちこそ、ミルキアロの描きたいものと思って構いません。


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