カプ・テテフを求める旅《上》 ウルガモス



あるお金持ちの紳士

翌日、旅の費用を稼ぐために
ホールスタッフのアルバイトをしていたボクの耳に、ある人物の話が飛び込んできた。

「でよー。そいつがえらい大金持ちでよー
昔カプ・テテフってポケモンとも、知り合いだったらしいぜー。」

……
ボクはピタリと足を止めた。

お客の話に聞き耳を立てながら、ボクは冷静を装おうと頑張った……
頑張った……けどさ……!

「しかもよ、そいつは今この街に来てるそうだ
みんな大騒ぎしてるよ。ぎゃっはっは」

ボクはたまらなくなって、手に持っていたトレイをぎゅっと握りしめた

たたっと走り、料理を反対側のテーブルに届けると
ボクはお客のいるテーブルへ行き、仕事のフリをして色々たずねてみた。

「どうした?ネコの坊主
その大金持ちの事がそんなに気になるかい?」

トレイを膝の前に畳みながら、ボクはこくこくと2回も頷いた。

「じゃあよ、この街で一番の高級ホテルへ行ってみな。今晩そいつはそこに泊まるそうだ
何しろ大金持ちだしな。ぎゃっはっは」

ボクは嬉しい気持ちでいっぱいになり、その客にお礼を言った

街一番の高級ホテル……
そこにカプ・テテフを知るというお金持ちがいる。

ときめく思いでボクは、いてもたってもいられなかった

すぐにでも姉さんにこの事を伝えたい
初めて見つけた……カプ・テテフへつながる有力な手がかりだったから。

夕方になり、アルバイトが終わるとボクはすぐ
「テレパシー」で姉さんと話をした
姉さんももうすぐ、パン屋さんのアルバイトが終わるってさ

そのお金持ちがいるとされる高級ホテルの前で、ボクと姉さんは待ち合わせをする事になった
ボクは一足早くその場所へ行き、姉さんを待つことにした。



「はぁ……はぁっ……」

目的地に着いた時、ボクは息も絶え絶えだった
もうすっかり日が暮れている
ボクは額の汗をふきつつ、姉さんを待った。

しばらくすると、姉さんが走ってきた。

「どこに……いるのです?その人物……はっ」

姉さんは息苦しそうに、片膝と胸を押さえながら
ぽつりぽつりとボクにきいた

ボクはうしろを振り返り、目の前の大きな建物を利き腕の左手で指さした。

「このホテルにいるみたいだよ
ボクたちが探してる……カプ・テテフを知っている人物がさ。」

ボクと姉さんは、互いに見つめ合ったあと
両手でハイタッチをした。

「やったね!姉さん」
「ええ!」

伝説といわれるカプ・テテフを探すため、ボクたちは旅に出たけど
彼(彼女?)に関する情報は少なくて、
姉さんとボクは、確かな手がかりを求めていろんな島々をめぐってきた

旅の費用を確保するため、行きついた先々の街でよくアルバイトしたりもした。

途中、倒れそうな時もあったけど
ついにとうとう、ボクと姉さんは「手がかり」を見つけた。

ボクは嬉しくなって
姉さんと、手をつないだまま踊りだしたくなった

そんなとき……
窓ガラス越しにボクたちを見ていたフロント係が出てきて
すたすたとこっちへ近づいてきた。

ボクと姉さんは、手をつないだままじっと黙った。

「坊やたち……今晩ここに泊まるのかな?
こどもが夜にウロウロしていると、悪いやつに連れ去られてしまうよ。
近ごろ「鼻の長い変質者」が出没するという噂だから。」

ボクと姉さんは目をぱちくりさせ
顔を見合わせた

手をほどくと、姉さんは事情を話した。

「ワタシと弟はロータからきました。
社会科見学のため、ここに寝泊まりされているというお金持ちの方と話がしたいです。
ぜひその方と直接お会いしたいと思うのですが……」

フロント係はウーンと難しい顔をし
「ちょっと待っていなさい」と言い残して、再び中へ入っていった。


「遅いですね……」

ボクと姉さんは、その場でずいぶん待ったけど、
フロント係は帰ってこない。

「ひょっとしてさ、
会ってくれる気がなかったりして……」

あまりにも遅いので、ボクは両手を後ろに敷いて、壁に背もたれた
足で地面にラクガキしながら、だんだんと不安な気がした。

しばらく経ってもやっぱり戻ってこない。

ボクと姉さんはがっかりして、今回はもうあきらめて帰ろうとした時、
さっきのフロント係が一人の「紳士」を連れて出てきた。

背中から6枚のモミジみたいな羽を生やしたその紳士は、堂々としていて
まるで仮面をかぶったように表情がなく、
黙ったまま、ボクと姉さんを上から見下ろしていた。

ボクはちょっと怖くなり、後ずさりをした。

今までに味わった事のない
「威圧感」……みたいなものを、姉さんもきっと感じていたと思う。

ボクたちの怯えた様子を見てとったのか
紳士はやや表情を緩めた

「君たちかな?ワタクシに会いたいと言うのは」

紳士はユラユラとボクと姉さんの前まで来ると、前かがみになって
ボクたちに目線を合わせた

「おびえなくていい。ワタクシの名前はウルガモスだよ、はじめまして。
君たちの事を教えてもらえるかな?」

ボクと姉さんは緊張しながら、それぞれ名乗った。

「マリーベルちゃんと、シルバニアくんか。
勉強熱心な子供は大好きだよ。知りたい事があったら何でも聞きたまえ……キッハハハ」

よかった……思ったより優しそうな人物だ。
ボクと姉さんはほっとして、お互いの顔を見合わせた。

「さあ!中へ入りたまえ。
長旅でずいぶん疲れているだろう。ワタクシの部屋でゆっくりするといい
そう、とっておきの……ロイヤルスイートルームでな!」

キッハハハ、と笑うウルガモスさん

この風変わりな紳士に連れられてボクと姉さんは
ホテルの中へと入っていった

果たして、この人物から「カプ・テテフ」の情報を聞き出せるんだろうか?




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