Chapter2:ペリッパーの郵便局

「は?入学許可証?」

アイスクリーム屋へ幼馴染のピィ・ププリンと一緒にアイスを食いにきた俺は、

大金を払って買った10段アイスを思わずボトリと床に落とした。

「え~?ピチューん家、届いてないの~?」

「私らん所にはちゃんと来てるよ!《シルヴァー学園》の入学許可証!」

二人はいかにも高級そうな『紙』を取り出し、俺にでかでかと見せた。


おい、待てよ。何だそのいかがわしい紙は!

今朝ポストを見た時には、そんなモン入ってなかったぞ……

「ピチュー、存在忘れられたんじゃない?」


俺はずっこけた。



……ありえない!


《ポケッ島》に住むポケモンは12歳になったらみんな学校に通うもんだ。

ワザの使い方を教わるために。

俺もピィもププリンも早く、大人たちみたいにワザを使いたくてたまらない。

いつも学校に入れる日をどんだけ夢見たことか……。

入学するのに必要な、『入学許可証』がないとくりゃ大問題だ。


「ほんじゃあ、郵便局にきいてみる?」

「そ……そうだな。」

俺は自分だけスルーされた理由を知るべく、

《ペリッパーさん》がやってるポケットタウンでただ一つの郵便局に三人で向かった。



「わぁっ!ピチューお兄ちゃん!?」


慌てて入ったせいで、ペリッパーさんの子供の《キャモメ》がおどろいて飛び上がった。

おどかしてワリぃ~!チビすけ。

俺は週に5日、ここの配達を手伝っていて、

お駄賃も頂いてる身分だから、
ペリッパーさん所のチビのキャモメとはよく顔を合わせてる。すっかり顔なじみだ。

このチビすけ、ペリッパーさんに憧れてんのか

もう使わなくなった古い帽子を、小さい体に似合わず無理してかぶってやがる。

「ビックリしたぁ~……

今日はお兄ちゃんけつばんでしょ!どうしたのさ?」
「まあ、ちょっとヤボ用があってよ……」

騒ぎを聞きつけたのか、奥からペリッパーさんがやってきた。


俺はさっそく自分が置かれている状況を

ペリッパーさんに話した。

「うーん……そんなハズ無いねぇ。ちゃんと今朝届けたよ。きみん家に。

朝日がのぼる前に。朝一番に。」

ペリッパーさんは腕を組み、首を傾げ、悩んでいる様子を見せた。


ちゃんと配達しただと?

そんな馬鹿な……

朝出かける時、確かにポストを見たがナンにも無かったぞ。


だったら俺の入学許可証は……

一体どこへ消えて失せたっていうんだ!

このままじゃ俺だけ《シルヴァー学園》に入学できなくなっちまう!

なんてこったぁぁ!

「悪いけどウチではどうしようもないねぇ……そうだ、市長の《リザードンさん》に頼んで、

入学許可証を再発行していただいたらどうかな?」

ペリッパーさんが思いついたようにポンと、手を叩いた。


リザードン市長……

そっか!あの人なら何とかしてくれるかもしれない!

「今の時間だったらリザードンさん、市役所にいるんじゃないかな。

だけど、あまり邪魔してはいけないよ。
市長は忙しいからねぇ。」

了解したぜ。


よーし。そうと決まりゃ、さっそく市役所に猛ダッシュだ

何せ俺の将来がかかってるんだからよ!

「あのさ!お兄ちゃんに、

ボクたちからプレゼントがあるんだ。ねえパパ!」

俺たちが去ろうとすると、

チビが突然、思い出したように言った。

「おぉ!忘れる所だったよ

ピチュー君、ちょっと待っていてくれ!」

ペリッパーさんはそう言って奥へと姿を消し、

数分後、サーフボードのような板っきれを持って再び姿を現した。

「あ~!それって、Vボード!?」


ププリンが嬉しそうにぴょんぴょん跳ねた。

ペリッパーさんが持ってきたのは、
まだ一度も使われていないであろうピッカピカの『Vボード』だった。

Vボードっていうのは、早い話が『空飛ぶスケボー』だ。


ぱっと見はただのサーフボードに見えるけどよ、

板の底から空気を吹き出して、自在に空を飛べるっていう優れものなんだ。

よく分からんが、空気中にある『飛行のVウェーブ』ってのを燃料にしていて、

かなり長い間飛び続けられるんだってよ。

俺が使ってた自前のVボードはこの前、

ピィにめちゃくちゃな乱暴運転されてぶち壊されちまってよ……
ものすげぇヘコんでたんだよな……

マジでそれ俺にくれるのか?

ひゃっほ~!サンキュー、ペリッパーさん!

「いやぁ~福引きで当たったんだけど、私とキャモメは飛べるからねぇ~。

だったらねぇ、いつも配達を頑張ってるピチュー君にあげようって事になったんだ。
君が乗ってたVボード、確か壊れちゃったろう?遠慮しないで持っていくといいよぉ~。」

チビとペリッパーさんにお礼を言い、

俺たち三人はVボードに乗って空を飛んだ。

うっは~!やっぱVボードで空を飛ぶのは

最高に気持ちがいい!

これからは俺をただのピチューじゃなくて、

「空飛ぶピチューのアニキ」と呼んでくれよ!みんな!

途中、ご近所に住んでるエアームドオバサンとぶつかりそうになって

「きぃザマス~!」と言われたような気がしたけど、
そんなのは無視だ。

よーし!このままリザードンさんのいる市役所まで、ひとっ飛びするぜ!





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