Chapter8:ペンション・カンナギ

船旅の末、俺とキャモメのチビすけは《ウェイブタウン》へやってきた

「くはー!サイコーの気分だぜ!」

船から降りた俺は、
快晴の空の下で潮風に当たりながら素晴らしい解放感に酔いしれた

まぶしく照りつける太陽の光、
ザザーッという波音、石づくりの桟橋の焼けた匂い……
何もかもが俺様の「夢への出発」を祝福してくれているようだった

ここには俺の邪魔をする不届き者どもはいない……
まさに新天地だぜ!かはーっ!!

「ピチューお兄ちゃん!
ボク、ソフトクリームが食べたいよぅ!!」

向こうにアイス屋があるのを見て、
チビが俺のシッポをくちばしで激しくつっついてきた
あででで!わーったよ、買ってやるから『つつく』のはよしやがれ!

俺は"なけなしのカネ"でチビにアイスを買ってあげた後、一緒にリニアの駅へ向かった
山の上にある『高街』へ行くためだ。

ここ《ウェイブタウン》は、ビーチやショッピングモールがある『海街』と、
ホテルや住宅街が密集してる『高街』に分かれている。

俺とチビは高街にあるペンションを目指し、さっそくリニアに乗って移動を始めた


「見てっ!!
パラソルが、いっぱい並んでる!」

靴を脱いで座席に乗り出し、窓の外を眺めていたチビは
ずっと下の方にビーチを見つけ、それを指さしながら目をキラキラと輝かせた

ぐふふ……
そんなに慌てずとも時間はたっぷりあるぜ
何たってしばらく、このリゾートの街に滞在するんだからよ

「あとで海水浴に連れてってやるよ!」と言いながら
チビのプニプニした柔らかい足のウラをつんつんしてやると、チビはくすぐったがってひっくり返った。

まるで可愛い『弟』が出来たみたいだぜ。

まぁ……
ここへ来る途中の船で、俺の身体にゲロを吐かれた時は
さすがに目の前が真っ暗になったけどな。くそが!徹底的に洗ったのにまだ体が少しゲロ臭いぜ









カプじいに裏切られた俺は……
胸糞悪い《ポケットタウン》からとっとと出ていく事に決めた。

サニーゴのいる《ウェイブタウン》へ行くため、
荷物をまとめて港へ行った俺は、偶然にもペリッパーさんとチビすけに出会った。

チビすけはリュックサックを背負ってて、一人で船に乗る所だったらしい。

どうやらペリッパーさんは出張に行かなくちゃならなくなり、
その間、《ウェイブタウン》にいる友人の所へチビを預ける事にしたんだってよ
目的地が同じな上、チビが俺に懐いてるから、俺たちは二人でこうして《ウェイブタウン》へ来る事になったんだ











無邪気で落ち着きがない、世話のかかる"小さな同伴者"がいたおかげで
俺の気持ちはだいぶ紛れたように思う。



もしペリッパーさん達とばったり遭遇してなかったら、俺は一人寂しく"失意の旅"に出る所だったぜ。












「よーし!着いたぜ」

高街の駅から降りた俺とチビは、しばらく歩くと『ペンション・カンナギ』に辿りついた。
ペリッパーさんの友人の《ミルタンク》さんがやってる宿屋だ。

ミルタンクさんには前に何度か会ってる
美味い《モーモーミルク》をいつもご馳走してくれる、ずんぐりした気前のいいおばちゃんだ。

俺は「カラカラン」と音が鳴るペンションのドアをくぐり、さっそく中へ入ろうとした
だが、あろう事か先にチビが勢いよく飛んでいった

俺は悪い予感がし、
「危ねぇぞ!」と注意しようとしたが、時すでに遅しだった。
ウェイターっぽい青いネコがチビと派手に衝突し、「ガシャン!」という音と共に二人はたおれた。

しかも、運んでいたアツアツのミルクが身体にかかってしまい、
ウェイターのネコは「あちち!」と声をあげた

かはーっ
何てことだ……最悪だぜ!!

「おい!大丈夫かよ」

俺は慌てて二人に駆け寄った
チビは仰向けに倒れ、目をグルグル回していた

ぶつかられた上、熱いミルクをかけられたネコはちょっぴり涙ぐみながら、
床に落ちたトンガリ帽子を拾ってかぶり直していた。

「く、すまねぇ!俺のツレがとんだ迷惑かけちまったな」

俺が土下座しながら謝ると
ネコは「いいよ!気にしないで」と言ってくれた

よく見るとまだ小さい子供のネコで、声もかなり幼い感じだった。

「ンモ~!一体どうしたのよ!?
すんごい音がしたけど……」

騒ぎを聞きつけ、上の階から主のミルタンクさんが降りてきた

もう一匹、一緒にいた白いネコが
事態を察したのか青いネコの方へ駆け寄ってきた。

「大丈夫ですか!ジョバンニ!」と心配する白いネコに、青いネコは「うん。」と答えた

トンガリ帽子の青い方はオスっぽいが、
白い方はどうやらメスらしいな。こいつら双子か?

「アラ~ッ!!
チビちゃん大丈夫!?怪我してない!?
駄目よモ~!お店の中ではしゃぎ回ったりしちゃ!!」

仰向けに倒れてるチビをおばちゃんが見つけ、介抱してあげた
「ごめんなさい……」とチビは小っちゃくつぶやいた

チビは膝を擦りむいていたが、大した怪我はなさそうだった

「アラ~ッ!!
ピチューちゃん!いらっしゃい!
事情はペリッパーから聞いてるわ!好きなだけ泊まって頂戴!その代わり働いてもらうけどね!!」

「あ、ああ。」と俺が返事をすると
おばちゃんはチビを抱きかかえ、ドシン!ドシン!と上の階へ消えていった

ぐふう、相変わらず騒々しいおばちゃんだぜ……

ヒヤヒヤして胸を撫でおろしてると、
後ろから「ねえ。」と呼ばれた。青のネコだった。

「キミ、ここに泊まるのかい?
ボクと姉さんが部屋まで案内してあげようか。」

俺は「おう!よろしくな」と答え、一緒に階段の方へ向かった

階段を登る途中、俺はネコたちとお喋りをした。
白い方の姉は《グリモワール》って名前で、青い方は弟で《ジョバンニ》って名前だそうだ
姉弟そろってここで"泊まり込みのアルバイト"をしてるんだってよ。

二階へ上がると、スリッパがぐちゃぐちゃに転がっていた

「ゴメンね。ちらかってて
いつもはきちんと、綺麗に並べてあるんだけどさ……」

弟ネコが申し訳なさそうに言った

さっきミルタンクさんが慌てて通ったのか、ぐちゃぐちゃになってやがる……
スリッパだけじゃなく、ミルタンクさんのサンダルやチビすけの靴まで転がっているのを見て俺は察した。

「ここからは"履き物"を脱いでもらいますから
アナタ、さっさとその『小汚い便所サンダル』からスリッパに履き替えて下さい。」

姉ネコのきつい言動にちょっぴりイラッとしたが、
弟ネコになだめられ、俺は言われるがままスリッパに足を突っ込んでやった

「ぎし……ぎし……」と鈍い音がする廊下を歩いてると、部屋についた
中ではチビがミルタンクさんに手当てされていた

「はい!これで大丈夫よ」

チビは「ありがとう!」とお礼を言い、嬉しそうにバッサバサと飛び回った。
すっかり元気になったようだな。

しばらく飛んだ後、チビは俺の頭の上に降りてきた

「アラ~ッ!!
いらっしゃいピチューちゃん!
狭い部屋だけど、ここがピチューちゃんとチビちゃんの部屋よ。ゆっくりしていって頂戴ね!」

俺とチビはおばちゃんにお礼を言い、荷物を床に降ろした

「ピチューお兄ちゃん!
ビーチ行こうよ!ボク海水浴がしたいよぅ!」

チビがさっそく言い出した
そうしてやりたいのは山々だがよ、俺は『市役所』で引っ越しの手続きをしなくちゃならないんだ
俺が「今度にしような!」と言ったらチビはムスッとふくれた

「それじゃあさ、
ボクたちとカード遊びしよう!」

弟ネコがそう言うとチビは喜んでくれた

とりあえずネコの姉弟にチビのことを押し付けて
俺はいつもの便所サンダルに履き替え、サニーゴのいる『市役所』へ向かった









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