Chapter11:キャモメのおつかい

俺とチビはニャオニクスの姉弟と『海街』にあるショッピングモールで買い物した後、
荷物を抱えながらビーチ沿いの街道を歩いていた

「アリガトね二人とも
ボクと姉さんの買い出し、手伝ってもらってさ!」

トンガリ帽子の弟ネコがお礼を言ってきた
気にするな、俺も丁度《シルヴァー学園》での寮生活に使うハブラシやら筆記用具やら買いに行く所だったんだ
それに新しい便所サンダルもな。前のはあの晩、腐ってボロボロになっちまったからなー

「いやぁ~。あの《スーパーギガヤス》ってデパートサイコーだったな!」

全ての売り物がポケットタウンの半分以下の値段っつーバグみてぇな安さで驚いたぜ
おかげでだいぶ金が浮いて、チビに玩具を買ってやれたほどだ

買ってあげた超合金ロボを上機嫌にブンブン振り回し、
「フォックスファイヤー!」とか騒いではしゃぐチビの可愛さに俺は満足した
なんか、九星戦隊キュウコンジャーとかいう戦隊ヒーローモノに出てくる合体ロボットなんだってよ。

まぁそんな余計な買い物したせいで財布は空っぽになったが
これで《シルヴァー学園》で使う物は一通り揃えた。いつでも出発できる準備は整ったぜ!

そう、ただ一つの不安を除いてな……

ウェイブタウンに来て3日
俺の『入学許可証』は未だに届かない

《シルヴァー学園》への入学は一週間後だ
まだまだ余裕が残ってるとはいえ、もうそろそろ届いて欲しいぜ。
それにピィとププリンの消息も気にかかる。あの二人とは一緒に市役所へ忍び込んだ後それっきりだ

ピィププ……
俺が市役所に侵入しようとしたばっかりに学園入学の夢を断たれる事になっちまって
さぞかし俺のコトを恨んでるに違いねぇな

ヤケクソになって街を出たけど、せめて置手紙ぐらい残せばよかったぜ

あの晩、サニーゴに教えてもらった裏技
"別の街に引っ越す"っていう方法がある事をちゃんと二人に伝えられたのによ。

「クソッ!バカだぜ俺は」と思わずぼやいた
その途端、隣にいたチビがはしゃぐのをやめて真顔でこっちを見た

「お兄ちゃん、どうしたの?
こっちにきてからずっと様子がヘンだよ。」

チビの鋭い言葉がクサッと突き刺さった

う。こいつ気付いてやがったのか!
そういえばチビは前からやけに勘がいい所があったからな……
俺が勝手にポケットタウンを引っ越したって事を、薄々感づいてたとしても不思議じゃねぇぜ

隠し通すのは無理……かもな

俺はついにそう悟り、
ペンションに戻った後チビすけをベッドまで引っ張ってきて事情を打ち明けた

相手がまだ5歳児なのもあり、俺の話を一体どこまで理解してくれたのかは分からんが、
俺の話を聞いたチビはベッドに座ったままうつむいた。

「それじゃあ、お兄ちゃんは二人と一緒に行きたいんだね」

しばらく黙った後、チビは顔を上げて言った
ピィとププリンに関して俺が頭がハゲるほど悩んでるのを察したらしい。

できれば伝えたい……
俺はウェイブタウンにいて、まだ《シルヴァー学園》への入学を諦めてねぇって事を
そんで二人にもこっちへ来て欲しいって事をよ。

チビはたんっとベッドから飛び降りた

「じゃあさ!ボクがポケットタウンにひとっ飛びして、二人に手紙を届けるよ
ボク、郵便屋の子供だからさ!」

チビのその言葉に心が震えた

チビすけ……
やっぱお前だけが俺の味方だぜ!
俺は嬉しくなって、チビを思い切り抱きしめた

いきなり抱きついたせいでチビは苦しそうにもがき
スリッパもかたっぽ脱げ落ちた。だが許せよ……俺は今こうして居たいんだ。

チビ……可愛いぜチビ。ホントありがとよ
お前が一緒でよかったぜ

俺はさっそく"二人宛ての手紙"を使いまわしで二枚書いた

ピィ(ププリン)へ
俺のせいで 入学できなくなってごめんな
俺はチビすけと ウェイブタウンにいる ここは楽園だぜ

今すぐ 引っ越してこいよ
そうすれば《シルヴァー学園》に 入学させてもらえるってよ

俺はこっちで おまえらが来るのを待ってるぜ かはーっ!






ぐふふ、カンペキな文章だぜッ!

俺は書いた手紙を封筒に入れ、チビのリュックサックに突っ込んでやると
チビは窓からバサバサと飛んでいった

「頼んだぜチビ!
俺のこの声、俺のこの思い、遥かなポケットタウンのピィとププリンに届けてくれよな!」

大いなる期待で胸をいっぱいにし、飛び去るチビを見送りながら俺は手を振った
その姿はいつになく頼もしく思えた。







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