ブォォン…
汽笛の音と共に船は動き出した
部屋でくつろいでると乗務員がドアを開けて入ってきて、俺達全員に"小さな箱"をひとつずつ渡した
"理事長からのプレゼント"だってよ
箱を開けると、中から丸くて黄色いピカピカ光る機械が出てきた
「これは…ポケナビだ!」
《ポケナビ》…相手にメールを送ったり、地図を開いたり、
インターネットを使って色んな情報を仕入れることが出来る便利アイテムだ
ポケットタウンの郵便局で働いていた頃、
ペリッパーさんがこれを使って『全知全能.com』っつー何でも調べられるサイトにアクセスしたのを思い出す。
キーワードを入力するだけで関連サイトがわんさか出てきて感心したもんだ
俺もチビも興味津々だった
いつか自分用のポケナビが欲しいとは思ってたが、買うカネが無くて諦めていたんだ
ウェイブタウンのデパートでも中古品で10万ポケドルはした
俺の安月給じゃ到底買えんぜ
サニーゴが「じゃあさ?僕が買ってあげよっか」って言ってきたが
何かカッコ悪ぃ気がしてきっぱり断っちまったしな。今考えると勿体なかったぜホント
とにかく…そんな代物をタダでくれるとは、さすが天下のシルヴァー学園!太っ腹だぜ!
「見て!オレのは赤だよ!」
ヒトカゲのポケナビは炎のように真っ赤な色でピィとププリンのは両方ピンクだ
ニャスパーのは濃い紫色だった
「あべべ~!せっかくだから番号交換しようよ~!」
俺とピィとププリンとヒトカゲはお互いのポケナビの番号を登録し合った
これでお互い離れてても会話ができるぜ!
「へへっ!嬉しいなァ~
お前らと知り合えて幸せだよ!オレ、家を飛び出して良かった!」
大げさだなぁオイ…
ヒトカゲは嬉しそうに「なぁ、アンタの番号も教えてよ」と向こうに一人ぼっちでいるニャスパーに声をかけた
「結構よ。
だってメールする事は無いと思うから」
ニャスパーに冷たく返されてヒトカゲはまたショックを受けたように固まった
「勘違いしないで。私メカには興味ないの
それに私はテレパシーが使えるからそんなもの必要ないし」
ほう…
テレパシーが使えるのかニャスパーは
「あべべべ~。
ニャスパーってひょっとしてメカオンチなの?」
ププリンが冗談半分に言うとニャスパーは顔をしかめ、本をパタンと閉じて椅子から立ち上がった
「…不愉快。
ちょっと散歩してくる」
ニャスパーはしかめっ面を維持したまま、白い革靴を履いたその短い足で
のそのそとドアの方へ歩いて部屋から出ていった。
「あれさ、たぶん図星だぜ!」
ニャスパーの姿が見えなくなった後、ヒトカゲがヒソヒソと笑った
「なあ、ハラ減らない?上の方に食堂があるんだってさ
ちょっくら食いにいこうぜ!」
そんなわけで俺達は食堂に向かった
食堂は"展望エリア"といわれる船の上層にあり、広くて壁のほとんどがガラス張りのせいか明るかった
食堂には結構な数の新入生がすでに来ていて、机でワイワイ騒ぎながらランチを食べていたり、
奥の机にズラリと並んだ料理から好きなものを手に持った皿に入れて歩いていた
「あべべべ~!賑やかだね!」
ここはバイキング方式で、好きな料理を好きなだけ取っていいらしい
俺たちはそれぞれ皿を持って食いたい料理を盛りつけて回った
料理はカレーにサラダにパスタに色々あったが、俺はそれらをバランスよく皿に盛り込んで食う事にした
「ふっ。完璧すぎる献立だぜ
それに比べて"こいつら"ときた日にゃ…!」
ピィ、ププリン、ヒトカゲの皿を見た俺はそのあんまりな内容にゲンナリした
ププリンはハンバーグにケーキを乗っけて上からシロップをぶっかけてるし、ピィの皿には肉しかなかった
ヒトカゲに至ってはライスに生のトウガラシを盛りまくっていた
く、こいつらどんな食い方してやがる!
「あれ、ひょっとして知らないの?トウガラシ丼
これが美味しくてさぁ~♪」
ヒトカゲはトウガラシをスプーンで大量にすくい、ライスと一緒に口の中に突っ込んだ
「んっまぁーい♪」だってよ。
トウガラシ丼だと…
うおえぇ~
想像しただけで火を噴きそうだぜ…
さっきのサブレといい、こいつら炎タイプの味覚はどうなってんだ?
「なぁ!あっちの机で一緒に食おうぜ」
ヒトカゲは向こうにある机を指さしてそっちへ走っていったが
丁度別の方からウサギっぽい男の子がきてぶつかり、トウガラシをぶちまけながら二人は倒れた
「おい!大丈夫かよ」
俺たちは慌てて二人に駆け寄った
「あいてて…!
ゴメンよ、前見てなかった」
耳長で茶色い毛のウサギの男の子はゆっくりと立ち上がり、ヒトカゲにペコリと謝った
「いやぁ、こっちこそ不注意だったよ!ゴメンゴメン!」
ヒトカゲはズレた帽子をせっせと直しながらウサギの男の子に謝り返した後
落としたトウガラシを一つ拾い、それをガリッと噛んだ
「え!?食べるんだ…
おなか壊すよ」
ウサギの男の子はとまどっているようだった
「オレが住んでる砂漠の国じゃ食い物は貴重だからね
一つも無駄にしちゃいけないルールなのさ」
「それにさ、このぐらいで腹壊したりしないって!」とヒトカゲはもぐもぐ食べながら笑った
「キミって逞しいんだね…
オイラはホルビー!組分けで一緒になったらよろしく!」
俺達はお互いに自己紹介した
「よろしくなホルビー!
そういや、さっき言ってた"組分け"って何の事だ?」
俺が尋ねるとホルビーは「え…」という反応をした
周りを見たらヒトカゲも、ピィも、ププリンも似たような顔で俺を見た
な、何だよてめぇら…そんな目で俺を見るんじゃねぇ!
「驚いた。あなた何も知らないのね
それでも新入生?」
後ろからイヤミな声がし、振り向くとニャスパーがいた
で、出やがったなこの冷血娘
ここで何してる!?
「…愚かな質問。
ここは食堂よ?食事しにきたに決まってるでしょ」
ニャスパーはプイッとそっぽを向いた
うぐぐぐ…!
相変わらず態度がむかつく女だぜ!
「シルヴァー学園では"6つの組"があって、
私たち新入生はその内のどれかに属する事になるの。」
ニャスパーが言うには《シルヴァー学園》には
空組、時組、闇組、嵐組、炎組、光組という6つのクラスがあるらしくて
俺たちはタイプによってそのどれかに入る事になるんだってよ。
なるほど、いいコト聞いたぜ!!
「あきれた…
あなた、少しは予習した方がいいわ。
せっかくポケナビっていう便利なアイテムをもらった事だしね」
ニャスパーはそう言い、すました顔で向こうにいった
くっそぉ~…お高く留まりやがって
お前に言われなくても学園に着いたらいくらでも勉強してやんぜ!
やや気分は害したものの、ガツガツ ムシャムシャ と腹いっぱい飯を食って満足した俺たちは食堂を後にした
《次のチャプター》へ
《前のチャプター》へ
汽笛の音と共に船は動き出した
部屋でくつろいでると乗務員がドアを開けて入ってきて、俺達全員に"小さな箱"をひとつずつ渡した
"理事長からのプレゼント"だってよ
箱を開けると、中から丸くて黄色いピカピカ光る機械が出てきた
「これは…ポケナビだ!」
《ポケナビ》…相手にメールを送ったり、地図を開いたり、
インターネットを使って色んな情報を仕入れることが出来る便利アイテムだ
ポケットタウンの郵便局で働いていた頃、
ペリッパーさんがこれを使って『全知全能.com』っつー何でも調べられるサイトにアクセスしたのを思い出す。
キーワードを入力するだけで関連サイトがわんさか出てきて感心したもんだ
俺もチビも興味津々だった
いつか自分用のポケナビが欲しいとは思ってたが、買うカネが無くて諦めていたんだ
ウェイブタウンのデパートでも中古品で10万ポケドルはした
俺の安月給じゃ到底買えんぜ
サニーゴが「じゃあさ?僕が買ってあげよっか」って言ってきたが
何かカッコ悪ぃ気がしてきっぱり断っちまったしな。今考えると勿体なかったぜホント
とにかく…そんな代物をタダでくれるとは、さすが天下のシルヴァー学園!太っ腹だぜ!
「見て!オレのは赤だよ!」
ヒトカゲのポケナビは炎のように真っ赤な色でピィとププリンのは両方ピンクだ
ニャスパーのは濃い紫色だった
「あべべ~!せっかくだから番号交換しようよ~!」
俺とピィとププリンとヒトカゲはお互いのポケナビの番号を登録し合った
これでお互い離れてても会話ができるぜ!
「へへっ!嬉しいなァ~
お前らと知り合えて幸せだよ!オレ、家を飛び出して良かった!」
大げさだなぁオイ…
ヒトカゲは嬉しそうに「なぁ、アンタの番号も教えてよ」と向こうに一人ぼっちでいるニャスパーに声をかけた
「結構よ。
だってメールする事は無いと思うから」
ニャスパーに冷たく返されてヒトカゲはまたショックを受けたように固まった
「勘違いしないで。私メカには興味ないの
それに私はテレパシーが使えるからそんなもの必要ないし」
ほう…
テレパシーが使えるのかニャスパーは
「あべべべ~。
ニャスパーってひょっとしてメカオンチなの?」
ププリンが冗談半分に言うとニャスパーは顔をしかめ、本をパタンと閉じて椅子から立ち上がった
「…不愉快。
ちょっと散歩してくる」
ニャスパーはしかめっ面を維持したまま、白い革靴を履いたその短い足で
のそのそとドアの方へ歩いて部屋から出ていった。
「あれさ、たぶん図星だぜ!」
ニャスパーの姿が見えなくなった後、ヒトカゲがヒソヒソと笑った
「なあ、ハラ減らない?上の方に食堂があるんだってさ
ちょっくら食いにいこうぜ!」
そんなわけで俺達は食堂に向かった
食堂は"展望エリア"といわれる船の上層にあり、広くて壁のほとんどがガラス張りのせいか明るかった
食堂には結構な数の新入生がすでに来ていて、机でワイワイ騒ぎながらランチを食べていたり、
奥の机にズラリと並んだ料理から好きなものを手に持った皿に入れて歩いていた
「あべべべ~!賑やかだね!」
ここはバイキング方式で、好きな料理を好きなだけ取っていいらしい
俺たちはそれぞれ皿を持って食いたい料理を盛りつけて回った
料理はカレーにサラダにパスタに色々あったが、俺はそれらをバランスよく皿に盛り込んで食う事にした
「ふっ。完璧すぎる献立だぜ
それに比べて"こいつら"ときた日にゃ…!」
ピィ、ププリン、ヒトカゲの皿を見た俺はそのあんまりな内容にゲンナリした
ププリンはハンバーグにケーキを乗っけて上からシロップをぶっかけてるし、ピィの皿には肉しかなかった
ヒトカゲに至ってはライスに生のトウガラシを盛りまくっていた
く、こいつらどんな食い方してやがる!
「あれ、ひょっとして知らないの?トウガラシ丼
これが美味しくてさぁ~♪」
ヒトカゲはトウガラシをスプーンで大量にすくい、ライスと一緒に口の中に突っ込んだ
「んっまぁーい♪」だってよ。
トウガラシ丼だと…
うおえぇ~
想像しただけで火を噴きそうだぜ…
さっきのサブレといい、こいつら炎タイプの味覚はどうなってんだ?
「なぁ!あっちの机で一緒に食おうぜ」
ヒトカゲは向こうにある机を指さしてそっちへ走っていったが
丁度別の方からウサギっぽい男の子がきてぶつかり、トウガラシをぶちまけながら二人は倒れた
「おい!大丈夫かよ」
俺たちは慌てて二人に駆け寄った
「あいてて…!
ゴメンよ、前見てなかった」
耳長で茶色い毛のウサギの男の子はゆっくりと立ち上がり、ヒトカゲにペコリと謝った
「いやぁ、こっちこそ不注意だったよ!ゴメンゴメン!」
ヒトカゲはズレた帽子をせっせと直しながらウサギの男の子に謝り返した後
落としたトウガラシを一つ拾い、それをガリッと噛んだ
「え!?食べるんだ…
おなか壊すよ」
ウサギの男の子はとまどっているようだった
「オレが住んでる砂漠の国じゃ食い物は貴重だからね
一つも無駄にしちゃいけないルールなのさ」
「それにさ、このぐらいで腹壊したりしないって!」とヒトカゲはもぐもぐ食べながら笑った
「キミって逞しいんだね…
オイラはホルビー!組分けで一緒になったらよろしく!」
俺達はお互いに自己紹介した
「よろしくなホルビー!
そういや、さっき言ってた"組分け"って何の事だ?」
俺が尋ねるとホルビーは「え…」という反応をした
周りを見たらヒトカゲも、ピィも、ププリンも似たような顔で俺を見た
な、何だよてめぇら…そんな目で俺を見るんじゃねぇ!
「驚いた。あなた何も知らないのね
それでも新入生?」
後ろからイヤミな声がし、振り向くとニャスパーがいた
で、出やがったなこの冷血娘
ここで何してる!?
「…愚かな質問。
ここは食堂よ?食事しにきたに決まってるでしょ」
ニャスパーはプイッとそっぽを向いた
うぐぐぐ…!
相変わらず態度がむかつく女だぜ!
「シルヴァー学園では"6つの組"があって、
私たち新入生はその内のどれかに属する事になるの。」
ニャスパーが言うには《シルヴァー学園》には
空組、時組、闇組、嵐組、炎組、光組という6つのクラスがあるらしくて
俺たちはタイプによってそのどれかに入る事になるんだってよ。
なるほど、いいコト聞いたぜ!!
「あきれた…
あなた、少しは予習した方がいいわ。
せっかくポケナビっていう便利なアイテムをもらった事だしね」
ニャスパーはそう言い、すました顔で向こうにいった
くっそぉ~…お高く留まりやがって
お前に言われなくても学園に着いたらいくらでも勉強してやんぜ!
やや気分は害したものの、ガツガツ ムシャムシャ と腹いっぱい飯を食って満足した俺たちは食堂を後にした
《次のチャプター》へ
《前のチャプター》へ
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